横浜の整体 横浜天王町カイロプラクティック
JR横浜駅より相鉄線各駅停車で3駅。相鉄線天王町駅より徒歩四分。土日も営業。
Tel:045-331-0039

症例集:顎の痛み。

性別:男性 年齢:27歳
主訴:顎がガクガク言う、食事中に顎が痛む。(顎関節症)
なし

既往歴:

中二の時に骨肉腫を発症し現在も現存している。

過去にサッカーボールが左目に直撃して視力低下する。視力は両眼とも0.1以下。左目は乱視もあり特に悪い。

現病歴:

高校の頃から痛み出し、2年前からひどくなり、口を開けると右側からガクガク音が鳴っていたがそのうち音がしなくなり、ここ1週間は口の開け閉めで痛身が強く出る。

現病歴に関係する習癖:

ギターを弾くのが趣味のため長時間左へ傾いた悪い姿勢を取る事が多い。

左側で物を噛む。

歯ぎしりや食いしばりをしている。

所見:
顔の観察:

顔は右側が間延びし、左に縮んだ形の典型的な左咬み顔貌を呈し、顔面が左右で比対称。

姿  勢:

前方頭位で左に重心が移動し同側に傾いた姿勢。上半身が右側にねじれている。


検査所見:

開口検査:

開口すると二横指(指二本分)分しか開口できずまた、右の下顎枝付近に痛みを伴う。ただし頭を右側(非機能側)に傾けながら開口させると3横指分開口出来るようになる。

閉眼立位と継足歩行:

閉眼立位で左後方へ動揺。

踵とつま先をくっつけながら一直線状を歩かせる継ぎ脚歩行を行うと、ふらついて倒れてしまう。

この検査は警察が酒気帯び運転を取り締まる際に行う検査です。検問時にこの検査で倒れたりふらついたりすると飲酒を疑われます。この方はしらふで酔っぱらい並みに平衡感覚が悪いと言えます。

仮説診断:

猫背になると必然的に頭が前に突き出した姿勢(前方頭位)になります。

前方頭位になると頭の重心が前方に移動するので、ちょうど顎関節の上に頭が乗るような格好になります。そのため、顎関節に慢性的に負担がかかります。

頭の重みを支えるために頚や後頭部の筋肉、顎関節周囲の顎を閉じるための筋肉が異常に緊張します。顎の噛むための筋肉(咬筋、内側翼突筋、側頭筋)が緊張すると顎関節の緩衝剤のように働く関節円板を圧迫します。関節円板は慢性的に圧力が加わることで血流が阻害され変性(壊れて)してしまいます。顎が閉じる筋肉が慢性的に緊張して口が開けづらくなり、関節円板が変性するので痛みとゴリゴリと言う音を発します。

「前方頭位と猫背によって顎関節症が引き起こされたもの」と仮定して治療を進める。

カイロプラクティック的診断

診断は胸椎の4〜6番が後方に偏位し、頸椎の2番が噛む方向(左側)に偏位。
頸椎の3番右側へ回旋偏位
胸鎖関節の内方+上方偏位 

処 置:

頸部と背部の筋肉をほぐした後に胸椎の4、5の矯正し右の骨盤を矯正。
呼吸を促進するために大腰筋をほぐし、横隔膜のリリースを行う。
頸椎3番、2番、舌骨を矯正する。
狭くなった胸郭を広げるために胸鎖関節の内方+上方偏位を矯正 
ストレスリリースのためにアメリカで開発されたタッピングセラピーTFT(思考場療法)を行う。

結 果:

開口で3横指まで回復し、痛みはない。
治療前は閉眼立位で左後方へ動揺していたが、治療後は動揺も少なくなる。
継ぎ脚歩行はふらつく事はふらつくが、倒れる事なく歩けるようになった。
頚や顎周りの筋肉の張りもだいぶ無くなり楽になる。

経過及び計画

その後3回姿勢を改善するためのカイロプラクティックの矯正とストレスリリースのためのTFTを行う。
開口時の痛みと開けづらさは改善されるが、まだ音がする。
4回目に治療後マウスピースを造りそれをつけて寝てもらうように指導する。
5回目の来院された時は音もしなくなっていた。
来院間隔を1週一回から、二週間に一回に変えても開口時の開けづらさと痛みと音は解消されていたので現在は月一回のメンテナンス過程に入る。

姿勢と顎関節症

顎関節症は歯科医の専門領域だと思われがちですが、必ずしも歯並びの問題や噛み合わせの問題だけで発症する物ではありません。不良姿勢が原因で発症することが臨床上多々あります。

顎関節症は歯並びが悪くなったり、噛み合わせが悪くなって発症するのではなく姿勢が悪なった結果、発症する物でもあります。

不良姿勢による顎関節症のメカニズム。

顎関節症の原因とも言える不良姿勢は、下図のような「前方頭位と猫背」です。
前方頭位と猫背

1.肩甲骨の位置がずれる

猫背になると撫で肩になり肩甲骨と肩甲骨の間隔が正常よりも広くなり、肩甲骨の位置がずれてしまいます。肩甲骨の位置がズレると肩甲骨を支えている筋肉の緊張に不均衡が生じます。この筋肉の不均衡は肩や頚、顎、頭にまで波及します。

2.舌骨がズレる。

肩甲骨の位置関係が変化すると肩甲骨から舌骨に付いている筋肉(肩甲舌骨筋:下図参照)を緊張させ舌骨の位置が変わります。肩甲骨の位置が変わる事で、舌骨下筋が舌骨を下へ引っぱり結果的に舌骨の位置が偏位します。

肩甲舌骨筋
図は医歯薬出版:筋骨格系のキネシオロジーより抜粋

3.下顎骨がズレる。

舌骨の位置関係は舌骨から下顎骨に付いている舌骨上筋と、舌骨から肩甲骨や胸骨についている舌骨下筋の筋緊張のバランスで保たれています。

舌骨上筋、舌骨下筋
図は南江堂より出版されている「ネッター解剖学アトラス」より抜粋

舌骨の位置がずれる事で舌骨上筋が緊張します。舌骨上筋は下顎骨についているので舌骨上筋の緊張は下顎骨に伝わりの下顎骨の位置を後方+下方へ偏位させます。

4.顎関節の関節円板が変性する。

安静時に下顎骨が後方+下方にズレる事によって顎関節の関節円板が圧迫されます。この関節円板は顎関節の安定性と運動の誘導、衝撃の吸収など、顎関節にとって重要な働を担いっています。それが下顎骨がズレる事によって顎関節周囲の筋肉が緊張し、関節円板が慢性的に圧迫されます。

圧迫が続くと下図の関節円板の血管や脂肪組織、感覚神経が豊富に存在する関節円板の後部層が障害されて、関節円板に変性、摩耗、炎症を引き起こします。

関節円板
図は医歯薬出版:筋骨格系のキネシオロジーより抜粋

5.顎関節症発症

関節円板が壊れる事で顎関節内の摩擦が増し痛みを発したり、関節面が不安定になるために顎がガクガク鳴ったり、運動は劣悪になって開閉がスムーズに出来なくなる「顎関節症」になります。

不良姿勢から顎関節症に至る過程をざっと説明致しました。このように顎関節症は何も歯並びの問題だけではありません。姿勢を変えない限りいくら歯を削って噛み合わせを合わせたところで元の木阿弥です。

姿勢を直さずに歯を削る事は土台が傾いた家を土台を治さずに、部屋にある家具や調度品を傾ける事で真っ直ぐに見せるのと同じ事です。歯を削る前に一度カイロプラクティック矯正を受ける事をお勧めします。




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