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症例集026:左のゴルフ肘
経 緯:
半年前から左肘が何となく痛くなりだして放っておいたら、ここ2〜3ヶ月から痛みが強くなった。3ヶ月前に仕事を今の調理の仕事に就き、毎日フライパンを持つようになってから痛みが酷くなった。
特にフライパンを持つ動作(前腕回内・手関節背屈)で痛む。今は昔程痛む事は無いがそれでも長い時間フライパンを持っていると痛くなる。
3ヶ月前くらいが一番痛くて近所の整形外科に通う。X線撮影では骨に異常はない。医師からは外側上顆炎と診断され、湿布薬を処方されそれ以外の処置はない。
思い当たる要因としては、一年程前からゴルフを始めから本格的に練習を始め週に3〜4回練習に通っていた。3ヶ月前に痛くなって以来、ゴルフを控えるようになり、今では殆ど練習もコースにも行かない。
検査及び所見:
身体的特徴は上肢の筋肉が特に発達している筋肉質。伸張は180センチと大柄。左肩が右より前方に出ている巻き肩。肩甲骨も左側が右側よりも外側の位 置に有る。上腕骨も右よりも左の方が下がった位置にある。所謂、猫背、なで肩、巻肩。
筋肉緊張の分布を観察すると左上肢は大胸筋や腹筋等の身体の前面にある筋肉の緊張が強い。左三角筋前部、鳥口腕筋、上腕筋、回内筋など上腕の屈曲、前腕の屈曲、内旋に関与する筋肉の緊張が強い。
可動域検査:
左前腕回内、手関節背屈(掌を下に向けた状態で拳を握り、手首を上に持ち上げる動作)で外側上顆に痛み。左前腕回外、手関節背屈(掌を上に向けた状態で拳を握り、手首を下に向ける動作)で痛みは無い。
筋力検査:左腕橈骨筋:異常なし。
左長短橈側手根伸筋:筋力低下と痛みを訴える。
左橈側手根屈筋:異常なし。
左回外筋:異常なし。
左円回内筋:若干痛みを訴える。
左前鋸筋:やや低下
左僧帽筋中部繊維:やや低下
触診:左肘関節の上腕骨と橈骨頭間隙付近を軽く押すと圧痛みを訴える。
橈骨頭付近の軟部組織は緊張している。
所見:
手関節の単独伸展でも前腕の単独回内では痛みが出ない。そして、回内筋の筋力検査でも痛みは出ないことから、前腕回内と手関節背屈の運動が加わった時に痛みを訴える事が分かる。この動作はテニスのバックと同じでゴルフクラブを振り抜いた時の左手と同じ状態で外側上顆炎であると言えます。
仮設診断とカイロプラクティック的診断:
左肘の外側上顆炎の原因になっている部位は左腕橈関節と橈尺関節であると考えられます。
左腕の肘はゴルフのスイング時に振り抜くので相当強い遠心力が加わります。その強い遠心力が、左肘を構成している腕橈関節と橈尺関節に加わります。
この関節の支持構造は骨構造ではなく殆どが靭帯や筋肉等の軟部組織による物です。そのために関節自体が脆弱で特に引っ張り荷重に対して弱く簡単にズレてしまいます。>p
科学新聞社「動きの解剖学1」より抜粋
この関節がズレることで、回内時に橈骨の軌道が広がります。軌道が広がると、広がった分だけ橈骨頭とその周囲の筋との摩擦も増え摩擦によって痛みが発生します。また、ズレて不安定な関節を支えようと周囲の筋肉(特に橈側手根伸筋)が緊張して異常な凝りや張りを作ります。
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図4橈側手根伸筋※ | 図5手根伸筋※ |
科学新聞社「動きの解剖学1」より抜粋 | 医歯薬出版株式会社「筋骨格系のキネシオロジー」より抜粋 |
恐らくこの患者さんはゴルフスイングのような強い遠心力が頻繁に左肘の腕橈関節と橈尺関節に加わる事により橈骨がズレ、同関節の支持構造である軟部組織を痛めたと考えられます。
カイロプラクティック的診断:
- 左橈骨の下方偏移
- 左手根骨(有頭骨)上方偏移
- 左肩甲骨の外転または前突
- 胸鎖関節上方偏移
- 胸椎3、4、6後方偏移
処置:
- 前腕回内と伸展の動作を邪魔する拮抗筋(回外筋と上腕筋)の緊張が強いためこれをほぐす。
- 左手関節伸展の可動域を広げるために有頭骨を下方へ矯正する。
- 左の橈骨の位置を正常な位置に矯正する。
- 巻肩の状態と若干の猫背を改善するために椎骨や肩甲骨、鎖骨を矯正した。
- 橈側手根伸筋にそって筋力をアシストする目的でキネシオテープを貼る。
結果:
初診時:
左長短橈側手根伸筋の筋力検査では負荷に対して十分抵抗は出来るが痛みがまだ多少残るが、ペイングレードはここに来る前を10とした場合、現在は2になった。
長時間フライパンを持っていると時々痛むが、前のように持てなくなる程痛くなる事は無い。ほぼ前回と同じ処置を行う。アドバイスとして仕事後はアイシング10分を行い自分で出来る橈骨の調整法を教える。
痛みは殆どない。またゴルフを再開するようなので定期的な来院を薦める。
コメント:
回旋が上手く行かない分、腕力でボールを飛ばそうとするためにどうしても右手でしゃくり上げて打つために右肘の内側上顆を痛めます。
この方のように左肘を痛めるという方は、野球経験が長く身体の軸回旋、体重移動が上手く出来る方が多く、当たると飛距離が伸びるタイプです。飛距離を本人に聞くと「当たると凄く飛ぶけど、中々当たらない。」とおっしゃっていました。
ただこの方の場合、上肢の前面の筋肉の緊張が強いと左肩の可動域が大胸筋などの屈曲筋群に邪魔されて振り抜く事が上手く出来ないので、飛距離を出すためには骨盤や下肢の回旋、体重移動が上手くないと出来ません。恐らく上肢の筋肉(特に左)に柔軟性が無いため下肢の回旋と体重移動だけボールを飛ばしていたのでしょう。
下半身の動きは振りかぶってからヘッドがボールに当たる直付近までが体重移動によるスライドが主な動作で、ボールが当たってから振り抜くまでの下半身の動きは下肢の回旋を主として体重移動です。
上肢の緊張が強いと、ボールがヘッドに当たる直前付近から振り抜くまでの動作が下肢と上手く連動せずに運動の連続性が途切れてしまいます。下半身の回旋、体重移動の動きと上半身の回旋がスムーズに連動出来ないと、上半身の回旋に移行する時に動作が途切れます。運動が途切れる事でタイムラグができ、それを補うために力を込めて打つので、グリップを強く握りすぎ、ヘッドの軌道が変わって空振りする事が良く有ります。
この患者さんには素質が十分に有るので肘を治して猫背、なで肩、巻き肩を治して姿勢を変れば奇麗なフォームで見事なショットが出来るようになるでしょう。
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